Vittorio Monti: CZARDASAchille Simonetti: MADRIGALESolo de Violon: Mlle YVONNE CURTY; Au Piano: M. G. Van PARYS Columbia D19041FABRIQUE EN FRANCE 謎のヴェールに包まれたフランスの閨秀ヴァイオリニスト、イヴォンヌ・キュルティには戦前から熱烈なファンが存在し、とりわけ十八番のモンティの《チャルダッシュ》のSPは、旧録(佛Pathe)、再録音(佛COLUMBIA)ともに、その艶美な音色と驚異的な技巧で奏でる旋律の蠱惑的な歌い回しで一聴するや否や聴く者を呪縛してしまう名演盤としてファン垂涎の探求盤となってきた。このキュルティの《チャルダッシュ》の演奏の魅力を改めて江湖に知らしめファンの関心を高めたのにはレコード関連書籍に掲載された上杉春雄氏による次のやうな記述が一役買っているやうである。「しかし、このキュルティの演奏はひと味違う。セクシーで頭が切れて、でも可愛くて・・・そんな女性を魅力的と思わぬ男はいないであろう。まさにそんなイメージの演奏である。哀愁を帯びながらも決して重くならないラッス*、色っぽいけれどあくまで軽いフルス*。もう息をつく間もなく、聴かされてしまう。この超名演には、中野のやや老朽化が始まったマンションの一階の角部屋で出会った。住人は、SPコレクターとして日本屈指の某氏である。文字通り、レコードに埋もれて独居していらっしゃる某氏の、奥のリスニングルームにおかれた大型の蓄音機から、キュルティは姿を現した。この曲は、古澤巌、天満敦子といった日本の演奏家の手になる名盤も出ている。うかがえば、彼らもまさにこの場所でこのSPを聴いてすっかり魅了され、この曲が弾きたくなったんだとか。これだけで、キュルティの魅力がわかろうというもの。いつも某氏の所に遊びに行くと、かならず彼女をねだってしまう。すると、齢70を超えた某氏はぼそっと『あなたも好きですねえ』とつぶやき、SPをかけてくださる(『クラシック名盤この一枚』(2000年、光文社)」。*ラッス(ラッスー)はテンポの緩やかな箇所、一方、フリス(フリッシュ)はシンコペーションが特徴的で急速な箇所 出品者の当録音の初聴きは30年以上も昔、フルトヴェングラー協会会長を務めておられるK氏から恵贈に与ったカセットテープによるものだった。その比類ない艶美な音色でラッスーの妖艶なメロディを濃厚なポルタメントを効かせて歌い上げ、淀みなく超快速調で弾き切ってしまうフリッシュに驚嘆し何度も繰り返し再生し聴き入ったことを思い出す。CD時代に入り、上記の上杉氏の記事の影響もあってのことかキュルティへの興味が益々高まり人気も急騰し、後にはイヴォンヌ・キュルティ協会なるものも設立されている。この人気の急上昇を受けてのことかイヴォンヌ・キュルティのSP録音を蓄音器で再生し収録した復刻盤が発売され、出品者もまさに快挙と驚喜し早速購入し試聴した。ところが何たることかキュルティの優麗艶美な本来の音色が暈けて拡散し、あたかもLP時代に流行った疑似ステレオ盤に聴く焦点の定まらない再生音のやうである。これは出品者のみの感想ではないやうで、Web上の《カスタマーレビュー》欄にも次のやうなレビューが並ぶ。『蓄音機で再生したものをマイクで拾う。この様にすると、オリジナルのソースも、蓄音機の音もぶちこわしになることが多いです。蓄音機のラッパから出た音を別のラッパ(現代のスピーカー)から聴くことになります。トンネルの中に別のトンネルがある感じで、気持ち悪いです。イヴォンヌ・キュルティの様なマイナーな奏者を聴きたい人は相当なSPツウのはず。なのに、こんな異常な録音でごまかそうとすることが、ちょっと考えられません。』『他社の)CDは、音がもっと直接的に鮮明に聴こえてくる。・・・エコーがかかっているようでヴァイオリンの音の震えがまった く伝わってこなかった。・・・ポルタメント奏法が魅力的なだけにがっかりした。キュルティのまとまった演奏は本CD以外では聴けないだけになおさら残念だ』。これらの辛辣なレビューの原因が使用蓄音器(開口76cmの巨大なラッパ!を有し茫洋鈍重な低音が売り物)のラッパから出る音色を収録、特殊な変換方式で記録していることにあるものと思われる。それに加え使用されたSP盤にも原因の一端はあるのかもしれない。というのもこの復刻盤に使用されたのは番号の前にアルファベットのPrefixが付かない英COLUMBIA盤(5290)である。一方、ここに出品した盤は佛COLUMBIA盤(D19041)である。上述の『SPコレクターとして日本屈指の某氏』が所蔵しカセットテープにダビング頂いたSP盤、またグリーンドア音楽出版の復刻盤に使用された故クリストファー・N・野澤氏所有のSP盤、それらも当出品SPと同じく佛COLUMBIA盤(D19041)であり、何れからも共通した実に明澄な音色が再現される。 これほどの弦楽ファンの垂涎の的となっている人気盤であるから益々入手困難となり、特に佛Columbia盤は国内外オークションでも滅多に見ない。また盤面の状態の良いものは殆ど皆無である。当出品盤は両面とも美麗で、特に《チャルダッシュ》はおそらく出品者これまでに入手したなかでも最高の状態で目視的に瑕らしきものは見られず試聴するも音割れやクリック・ノイズは全くといって聴かれなかった。一方、オッドサイドの《マドリガル》の盤面も目立つ瑕はないが、小さな傷が散見され、試聴時、小さなティック音(鑑賞の妨げになるやうなクリック・ノイズではない)が聴かれたのみである。(注) 梱包について、10インチ盤ですがSP盤で破損防止の梱包材を挿入しますので、12インチ盤と同じ80サイズとなります。
謎のヴェールに包まれたフランスの閨秀ヴァイオリニスト、イヴォンヌ・キュルティには戦前から熱烈なファンが存在し、とりわけ十八番のモンティの《チャルダッシュ》のSPは、旧録(佛Pathe)、再録音(佛COLUMBIA)ともに、その艶美な音色と驚異的な技巧で奏でる旋律の蠱惑的な歌い回しで一聴するや否や聴く者を呪縛してしまう名演盤としてファン垂涎の探求盤となってきた。このキュルティの《チャルダッシュ》の演奏の魅力を改めて江湖に知らしめファンの関心を高めたのにはレコード関連書籍に掲載された上杉春雄氏による次のやうな記述が一役買っているやうである。「しかし、このキュルティの演奏はひと味違う。セクシーで頭が切れて、でも可愛くて・・・そんな女性を魅力的と思わぬ男はいないであろう。まさにそんなイメージの演奏である。哀愁を帯びながらも決して重くならないラッス*、色っぽいけれどあくまで軽いフルス*。もう息をつく間もなく、聴かされてしまう。この超名演には、中野のやや老朽化が始まったマンションの一階の角部屋で出会った。住人は、SPコレクターとして日本屈指の某氏である。文字通り、レコードに埋もれて独居していらっしゃる某氏の、奥のリスニングルームにおかれた大型の蓄音機から、キュルティは姿を現した。この曲は、古澤巌、天満敦子といった日本の演奏家の手になる名盤も出ている。うかがえば、彼らもまさにこの場所でこのSPを聴いてすっかり魅了され、この曲が弾きたくなったんだとか。これだけで、キュルティの魅力がわかろうというもの。いつも某氏の所に遊びに行くと、かならず彼女をねだってしまう。すると、齢70を超えた某氏はぼそっと『あなたも好きですねえ』とつぶやき、SPをかけてくださる(『クラシック名盤この一枚』(2000年、光文社)」。*ラッス(ラッスー)はテンポの緩やかな箇所、一方、フリス(フリッシュ)はシンコペーションが特徴的で急速な箇所
出品者の当録音の初聴きは30年以上も昔、フルトヴェングラー協会会長を務めておられるK氏から恵贈に与ったカセットテープによるものだった。その比類ない艶美な音色でラッスーの妖艶なメロディを濃厚なポルタメントを効かせて歌い上げ、淀みなく超快速調で弾き切ってしまうフリッシュに驚嘆し何度も繰り返し再生し聴き入ったことを思い出す。CD時代に入り、上記の上杉氏の記事の影響もあってのことかキュルティへの興味が益々高まり人気も急騰し、後にはイヴォンヌ・キュルティ協会なるものも設立されている。この人気の急上昇を受けてのことかイヴォンヌ・キュルティのSP録音を蓄音器で再生し収録した復刻盤が発売され、出品者もまさに快挙と驚喜し早速購入し試聴した。ところが何たることかキュルティの優麗艶美な本来の音色が暈けて拡散し、あたかもLP時代に流行った疑似ステレオ盤に聴く焦点の定まらない再生音のやうである。これは出品者のみの感想ではないやうで、Web上の《カスタマーレビュー》欄にも次のやうなレビューが並ぶ。『蓄音機で再生したものをマイクで拾う。この様にすると、オリジナルのソースも、蓄音機の音もぶちこわしになることが多いです。蓄音機のラッパから出た音を別のラッパ(現代のスピーカー)から聴くことになります。トンネルの中に別のトンネルがある感じで、気持ち悪いです。イヴォンヌ・キュルティの様なマイナーな奏者を聴きたい人は相当なSPツウのはず。なのに、こんな異常な録音でごまかそうとすることが、ちょっと考えられません。』『他社の)CDは、音がもっと直接的に鮮明に聴こえてくる。・・・エコーがかかっているようでヴァイオリンの音の震えがまった く伝わってこなかった。・・・ポルタメント奏法が魅力的なだけにがっかりした。キュルティのまとまった演奏は本CD以外では聴けないだけになおさら残念だ』。これらの辛辣なレビューの原因が使用蓄音器(開口76cmの巨大なラッパ!を有し茫洋鈍重な低音が売り物)のラッパから出る音色を収録、特殊な変換方式で記録していることにあるものと思われる。それに加え使用されたSP盤にも原因の一端はあるのかもしれない。というのもこの復刻盤に使用されたのは番号の前にアルファベットのPrefixが付かない英COLUMBIA盤(5290)である。一方、ここに出品した盤は佛COLUMBIA盤(D19041)である。上述の『SPコレクターとして日本屈指の某氏』が所蔵しカセットテープにダビング頂いたSP盤、またグリーンドア音楽出版の復刻盤に使用された故クリストファー・N・野澤氏所有のSP盤、それらも当出品SPと同じく佛COLUMBIA盤(D19041)であり、何れからも共通した実に明澄な音色が再現される。
これほどの弦楽ファンの垂涎の的となっている人気盤であるから益々入手困難となり、特に佛Columbia盤は国内外オークションでも滅多に見ない。また盤面の状態の良いものは殆ど皆無である。当出品盤は両面とも美麗で、特に《チャルダッシュ》はおそらく出品者これまでに入手したなかでも最高の状態で目視的に瑕らしきものは見られず試聴するも音割れやクリック・ノイズは全くといって聴かれなかった。一方、オッドサイドの《マドリガル》の盤面も目立つ瑕はないが、小さな傷が散見され、試聴時、小さなティック音(鑑賞の妨げになるやうなクリック・ノイズではない)が聴かれたのみである。(注) 梱包について、10インチ盤ですがSP盤で破損防止の梱包材を挿入しますので、12インチ盤と同じ80サイズとなります。